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【書評と演習】「理科系の作文技術」で文章の書き方を学んでみる

いままで記事を書く中で、文章力のことはあまり気にしていませんでした。しかし50記事投稿したことを良い機会に、改めて過去記事を見直してみると、わかりやすい文章の書き方が分かってないことに気づいてしまったのです。

そんなわけで、文章の書き方に関する書籍をしっかり読み込んでみようと思いました。参考にしたのは、9月30日に開催されたブロガーズフェスティバル2017のセッションで紹介された書籍です。

お恥ずかしい話ですが、すぐに購入したもののなかなか消化できずにいたのです。


複数の書籍を紹介いただきましたが、今回は「理科系の作文技術」を読んでわかったことをメモしておきたいと思います。

タイトルからは理系学生の論文作法や、研究職のレポートに関する文章技術を連想されるかもしれませんが、わかりやすい文章を誰でも書けるようにする技術についての内容なので、とにかくわかりやすい文章を書きたい、と思っている方には特に参考になると思います。

30年以上前に発売された本でありながら、わかりやすい文章の基礎は時代を経ても変わらないものなのだと感じました。

ただ、いわゆる芸術的な文章を書く方法の解説ではないので、そういう意味での名文・美文の構成方法を学びたい方には適していない本だと思います(独自の感性を出した文章を書くための、基礎にはなると思います)


ちなみに、この本の存在を知ったブロガーズフェスティバル2017については、こちらの記事でまとめていますのでよければどうぞ。


書籍中に用意されている演習問題は模範解答が示されていませんので、本記事中で僕なりの回答をまとめてみました。ぜひみなさんの回答と比べてみてください。

「理科系の作文技術」について

本書の構成は、まず理科系の仕事で書く必要のある文書の特徴と、その必要性から始まり、具体的なテクニックを解説するという順序になります。冒頭の一文が本書の内容をよく表していると思うので引用します。

他人に読んでもらうことを目的として書くものは、ここでいう仕事の文書にかぎらない。その代表は詩、小説、戯曲などの文学作品である。用件以外の、ひとと心を通わせるための手紙もその例だ。これらと対比して理科系の仕事の文書の特徴はどこにあるか。それは、読者につたえるべき内容が事実(状況をふくむ)と意見(判断や予測をふくむ)にかぎられていて、心情的要素をふくまないことである。

理科系の作文技術―5p

最終章には学会講演のための原稿作成手引きも載っていますので、プレゼンテーションを多く行う方の参考にもなると思います。

わかりづらい文章の原因は「逆茂木型」にあった!?

本書の中でもっとも印象に残ったのは「逆茂木(さかもぎ)型の文章」というフレーズです。これは修飾句・修飾節が前置された文章を指します。

実際の逆茂木型の文章はこんなのです。

長い航海を終って船体のペンキもところどころはげおちたは、港外で、白波を蹴立てて近づく検疫のランチの到着を待っている。

理科系の作文技術―83p

青字が修飾節赤文字が主語です。日本語に慣れ親しんだ日本人は、こういった文章をふんわり理解しながら読見進められます。ところが英語では言語上、長い修飾句・節は修飾対象の後ろに置くことが多いため、特に英語圏の人からするとかなり読みづらい文章だそうです。


逆茂木型の文章を書き直す演習はこちらです。

次の金属のうち、その4.0gを希塩酸の中に入れたとき、金属が反応して完全に溶け、その際発生する気体の体積が、0℃、1atmで1600cm3になるものを選べ。

理科系の作文技術―82p

こんな感じでしょうか。思い切って問題の対象である金属をXとして仮置きし、修飾が長くならないようにしてみました。

問題文の慣例が分かっていないので変な感じかもしれません。

回答

希塩酸の中に金属Xを4.0g入れる。金属Xは完全に溶け、その際に発生した気体の体積は1600cm^3となった。ただし温度と気圧の条件は以下とする。
(条件)
0℃、1atm

金属Xは次のうちどれか。


演習問題について考えてみた

書籍中で示されている演習問題の回答を考えてみました。

8.1節「文は短く」の演習

問題文はこちらです。

このCO2放出にはO2が不可欠であり、みかけ上は呼吸と類似の様相を呈しているが、これが光に依存したものであることや、また呼吸が2%O2で飽和に達するのに対して100%O2においてもなお飽和しないことなどから、通常の呼吸とは異なった機構に基づくものと考えられ、したがって光呼吸と呼ばれるようになった。

理科系の作文技術―p121

この節のテーマは一文をできるだけ短くすることだったので、文章を分割することと、分割した文の主語が明確になるように意識してみました。

回答

光呼吸は通常の呼吸と区別するために呼ばれる名称である。
光呼吸を通常の呼吸と比較すると、光に依存したものであること、通常の呼吸が2%O2で飽和するのに対して、100%O2でもなお飽和しない性質がある。

8.2節「格の正しい文を」の演習

問題文はこちらです。

アルミニウム製錬は電力多消費の代表のようなものなので、別項にのべるように電力単価の切下げ、別の新製錬法の開発努力もしているが、電力の安価な地域へ出かけて製錬することが計画されている。

理科系の作文技術―125p

この節のテーマは格の正しい文(=ことば同士の関係がきちんと保たれた文、あるべき言葉が脱落したり、ことばのつながり方がねじれていたりすることのない文のこと)を書くだったので、主語が混乱しないように、また、文の流れが自然となるように意識してみました。

回答

アルミニウム製錬では多量の電力を消費する。そのため別項で述べるように、電力単価の切下げや新製錬法開発の努力が行われており、他の方法として、電力の安価な地域での製錬も計画されている。

8.5節「読みやすさへの配慮」の演習

問題文はこちらです。

天然および人口の物質群により支えられている人間生活の安全性を確保するためには、物質に内在する生物学的活性、特に病原性の有無について熟知することが不可欠である。癌の実験的発生の研究には、分子生物学的、生化学的、形態学的手法を問わず、既知の癌原生物質を利用する以外になく、さらには人癌モデルを実験動物に確立することは、診断、治療の進歩にも寄与する。

理科系の作文技術―142p

8.5節までの内容を参考にして書き直せとのことだったので、こうしてみました。いまいち一文目と二文目以降のつながりがわかりませんが・・・

回答

人間生活の安全性は天然および人工の物質群によって支えられている。これを確保するためには、物質の生物学的活性、とくに病原性の有無について熟知することが不可欠である。

癌発生の研究には、1)分子生物学 2)生化学 3)形態学のいずれにおいても既知の癌原生物質を利用するしかない。そのため、人癌モデルを実験動物に確立することは、診断や治療の進歩にも寄与する。

「理科系の作文技術」と「コミュニケーション技術」

ブロガーズフェスティバルでオススメされた書籍のうち、「理科系の作文技術」と合わせて重要と説明されていたのが「コミュニケーション技術」です。

こちらは「理科系の作文技術」と比べると、実際の文章構造を解析する事例が豊富に感じました。また、文章単位ですぐに意識できるテクニックが多く、ページ数も「理科系の作文技術」より少ないので、そもそもわかりやすい文章とは何なのか?を把握したいときは、コミュニケーション技術を読めば十分かもしれません。

ブログって実用文じゃなくない?

おっしゃる通りだと思います。今回の「理科系の作文技術」で説明される「分かりやすい文章」というのは、「誰でも同じような解釈が可能な文章」という性質の文章のことです。

確かにブログで体験談や自分の意見を書く際には、こういった実用文の観点よりは、書き手独自の感性があらわれる文章のほうが好まれるかもしれません。

ただ、僕はまだ独自の感性を出した文章というものがうまく書けないので、実用文の型を学んでから、派生させていこうと考えています。文章の基礎を固めるという意味で、勉強になる本だったと思います。

まとめ

ブロガーの方ってあんまり文章書きに悩んでいる様子を見受けないのですが、記事を生産するうちに独自のスタイルが確立されるものなんでしょうか?

ちなみに、本当に論文を書く際のお作法はnext49氏(id:next49)が運営されているこちらのブログが参考になります。卒論執筆の際に参考にした記憶があるのですが、すっかり頭から抜け落ちてしまいました・・・とほほ。

ではでは。



なかなかわかりやすい文章が書けない・・・と悩んでいる方はぜひ書店で購入しみてください。

「コミュニケーション技術」に書かれた内容を電車内で見かけたので、記事にしてみました。
tempo96.hateblo.jp